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国選弁護人のあり方

刑事裁判の法廷で、国選弁護人のあり方について、考えさせられる場面に遭遇しました。

 
【登場人物】
弁護士A:日本人被告人の弁護人(たぶん私選)
弁護士B:外国人被告人の弁護人(たぶん国選)
 
【場面】
日本人被告人と外国人被告人は、共犯者として同時に刑事裁判を受けていました。
2人の被告人に執行猶予付き判決がなされた、その直後のことです。
(私は、法廷の傍聴席から見ていました。)
 
【概要】
かなりの推測が入りますが、どうやら、Aが、外国人被告人が日本人被告人から借りて住んでいた部屋の明渡しについて、外国人被告人の意向を聞きたいので、Bに対し、外国人被告人に会いに行くよう申し向けたところ、Bがこれを断わったようなのです。
(執行猶予付き判決により、被告人は釈放されますが、おそらく、この件の外国人被告人の身柄は、入管に引き渡されるのだろうと思われます。)
 
B「何故私が会いに行かなくてはならないのですか。」
A「先生は(外国人被告人の)弁護人でしょう。」
B「それは弁護人の業務でしょうか。通訳費用は先生が負担してくれるのですか。」
A「接見に行かれないのですね。」
B「はい。」
 
たしかに、裁判は終わったのですから、Bの弁護人としての業務は終了です。
そもそも、部屋の明渡しは、刑事裁判の弁護活動とは無関係であり、日本人被告人と外国人被告人の間における民事の問題です。
それをAが解決したいのであれば、Aが自分で、外国人被告人に会いに行けばいいだけです。
ですので、一見すると、間違っているのはAのように思えます。
 
しかしです。
 
Aの「先生は(外国人被告人の)弁護人でしょう。」との発言は、敷衍すると、「先生は(外国人被告人の)弁護人(だったのですから、国選弁護人の任務終了後も、無償で、弁護とは無関係に、外国人被告人の身の回りの世話をする信義則上の義務がある)でしょう。」ということで、これはなかなか説得力があります。
 
それに、Aは、「通訳費用を負担しない。」とは、一言も言っていません。
Bの「通訳費用は先生が負担してくれるのですか。」という問いに対し、Aが「接見に行かれないのですね。」と答えをはぐらかしているのは、通訳費用を負担するつもりがなかったからではないか?と曲解する人もいるかもしれませんが、他人をタダで使おうなんて弁護士がいるはずもなく、Aが通訳費用はもちろん日当だって支払うつもり満々であったことは、自明といえるでしょう。
 
なにも、Bが外国人被告人に会いに行かなくても、裁判は終わったのだから、Aが自分で会いに行くことに何の障壁もないじゃないか、Aは自分の仕事を他人に押し付けているだけじゃないか、という考えもあるかもしれません。
しかし、Aは何となく、Bより年上っぽかったので、儒教的には、Bは、Aの指示に従うのが正解です。
 
したがって、Bは、しのごの言わず、とりあえず外国人被告人に会いに行くべきであった、というのが、私の考えです。
 
最後のほう、AとBはちょっと険悪な感じになっていましたが、意見の相違というのは仕方のないことです。
同じ弁護士会の会員同士、そのうち一緒に、仲良くれもん鍋でも囲んでもらいたい、そう思いました。